相原君の戸川っち観察日記③

重鎮様のせいで話が脱線した。

とにかく最近の戸川は敵だらけで大変だ。

おまけに、戸川っちにとって良いのか悪いのか、海外赴任の気配が漂い始めている。

海外出張が頻繁に入るようになったし、欧州部長から度々ミーティングルームに呼ばれて何やらヒソヒソ大事そうな話をしてるし。

元々、海外勤務の希望はよほどの理由がない限り、海事の男性社員のほとんどが出している。

特に戸川は仕事熱心だし、早く海外勤務したいと昔から言っていた。

でも、最近の戸川はこの状況を喜んでるようには見えない。

部長との話を終えて席に戻ると、静かに重い溜め息を洩らして何やら考え込んでるし。

守秘義務があるから、誰にも打ち明けてないみたいだけど。

でも、(一方的)仲良しの相原君には打ち明けてくれてもいいのに。

口が軽いと思われがちだけど、俺は意外と口が固い。

なぜなら“相原君の喋りの九割は空気でできている”と言われるぐらい、意味のないことしか喋らないからだ。

重要事項は相原君の耳から入った後、ブラックボックスに消えていく。

アウトプットは泡ばかりだ。

まあ、そんなことは置いといて。