相原君の戸川っち観察日記③

16/34

2061人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
「この間、例の成瀬さんとホテルに入るとこ見たって」 それ仕事だよ、経企室の。 「うっそ。じゃあもう決定的?」 「聞いたけどさ。あの人の元彼って片桐王子に似てるらしいよ」 「うそ、誰よ?社内?社外?」 「元彼似って、未練たらたらじゃん。王子に失礼だよね」 由里ちゃんの一言が、管理部の女子に次々と飛び火していく。 「俺はパプリカ食べられるけど、ピーマン無理だよ。似てるけど」 椅子をキュルキュルいわせながら相原君が話に割り込んだ。 「まあ、どっちも嫌いだなー」 「そんな話じゃないです。勝手に割り込まないで下さい」 由里ちゃんが顔をしかめた。 「分かってるよー。未練たらたら女は嫌って話でしょ?」 まったく、どうして相原君は首を突っ込んでしまうんだ。 「なんか、あれ思い出すよね。突き落としたはずが、鉤爪で窓枠に引っ付いて復活するゾンビ」 由里ちゃんの爪をガン見しながら言った。 「怖いよねぇ、あれ」 ピキピキと血管が浮きそうな由里ちゃんの顔を見て満足する。 仕返ししといたよ、戸川っち。 あんま意味ないけどさ。 もはやこれは相原君の趣味だ。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2061人が本棚に入れています
本棚に追加