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背中を見送りながら、妙に心配になった。
その穏やかさが、忙しすぎる戸川の疲労を示してる気がして。
最近の戸川は出張に次ぐ出張で空席が多く、会社にいる日も社食に行く暇すらない。
成瀬ちゃんとも会えてないみたいだ。
社食で俺の横に戸川がいないのを見て、肩を落とす成瀬ちゃんを見れば分かる。
成瀬ちゃん自身も忙しいらしく、彼女の抱える担当業務が多すぎて心配だと、片桐主任が立ち話してるのを聞いた。
それでも彼女はいつも海事に来る度、海外出張者現況表の前で慌ただしい足を止め、しばらく眺める。
戸川っちの状況を見てるんだろう。
じきに下りる赴任の辞令に対してどう感じているのか、あまり感情を見せない戸川っちは本音を洩らさない。
でも、由里ちゃんの攻撃とかにも反応せず、沈黙のまま忙殺されていた戸川っちが、珍しく荒れた出来事があった。
年末の、海事の忘年会のことだ。
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