2060人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
来た来た。
今日も片桐王子が来た。
海事の大部屋の入り口に見えるのは片桐王子だ。
その後光がさすような眩しさは遠くからでも一目で分かる。
「やっほー」
「何なんだよ、仕事中にヤッホーて。子供か」
思わず漏れた独り言に、隣のデスクの戸川っちが呆れたように言った。
「だって王子来たし。王子にはもれなく成瀬ちゃんが付いて……」
しまった。
隣から殺意を帯びた冷気が漂ってくる。
浮かれてつい、戸川っちの地雷ポイントをもろに踏んでしまった。
そんな戸川っちの遠い先の通路を、王子と成瀬ちゃんが談笑しながら通り過ぎていく。
最近、米州部と経企室のプロジェクトが発足して、主担当の王子と成瀬ちゃんが頻繁に海事に来るようになった。
社食で無駄に探すより、居ながらにして頻繁に成瀬ちゃんを見られるから俺は嬉しいんだけど。
……戸川っちはそうはいかない。
最初のコメントを投稿しよう!