相原君の戸川っち観察日記③

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「座るな」 たった一言だけど、その声音に相原君までも縮み上がった。 「だってあの話はオフレコだから違う場所でと思って……」 何なのか事情は分からないけど、道中に泣いたのか、由里ちゃんの目のまわりの化粧が崩れていた。 敵ながら可哀想になる。 でも戸川は呆れたように鼻で笑うと、手酌でビールをまた一気に飲み干した。 「じゃあ、なんでわざわざあのホテルにした?」 ほほホテル?! 周囲の女子と相原君の瞳孔が一気に全開になる。 「それは……」 「消えろ」 その低く静かな一言に、騒めきかけた周辺も静まった。 「先輩……」 「汚い奴は消えろ」 「でも」 由里ちゃんが言葉を繋ごうとした瞬間、カーンと耳を突くような音を立てて戸川がグラスを机に叩きつけた。 割れるよぅ、戸川っちー。 気を揉むあまり手をモミモミしてしまう相原君、その命拾いしたグラスにあせあせとビールを注ぐ。 なんか新米キャバ嬢みたいだ。
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