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気になりつつ、戸川っちも居ないことだし、たまには同期のところに喋りに行こうと相原君も腰を上げた。
戸川っちの時とは違い、周辺女子からは何の溜め息も漏れないが、喜ばれなかっただけでもヨシとする。
仲良しがいる集まりにのんびりブラブラ足を向けた相原君。
しかし、迂濶だった。
重鎮ご一行様御席の存在をすっかり忘れていた。
「相原ー!」
突如背中に刺さった声に飛び上がる。
この声は……。
ええい、聞こえなかったふりで、何とか逃げきっ……
「相原ぁー!!」
ああ。なんで俺は元の席でおとなしくしていなかったんだろう。
「どこ隠れてた?ハイハイ、ここ座るよ、相原!」
真っ赤な酔いどれ顔で隣の座布団をパンパン叩く美香先輩を恐る恐る振り返る。
「あの、俺、トイレ……に……」
「なに?」
「何でもないですハイ」
諦めてしおらしく腰を下ろした相原君に、美香先輩がグラスを押しつけてきた。
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