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(やれやれ……今日で、飲まず食わずで三日目になるが、本当にLEAD3362の所に辿り着けるのか俺は――?)
最早、数百ルードしか入っていない預金カードを見詰めながらCVTR351は、溜め息をつきながら噴水の側に座り込む。
(さて……これから、どうするかだが……?)
ボーッとする意識の中で何気なく、預金カードを上投げ、能力を使い素早く取ると言う動作を繰り返す
CVTR351――。
だが、そんな虚しい行為を繰り返していた最中、不意に拍手が巻き起こる。
(な、何だ――!!?)
CVTR351の回りを、数十人の人々が取り囲み拍手を繰り返す。
そして、期待を込めた眼差しがCVTR351へと向けられる。
(まさか……、何かやれって事なのか??)
状況から推測するに恐らくは、旅芸人か何かと勘違いされている――。
CVTR351はそう認識した。
しかし……状況認識が正しかろうと、そうでなかろうと、何もしないで立ち去れる状況ではない。
(参ったな……。
俺、手品とか出来ないぞ……?)
悩んでみたものの、どう足掻いてもただでは帰れそうにない雰囲気にCVTR351は、思わず息を飲んだ。
(仕方がない、破れかぶれだ!!)
「さあさあ、まずはワタクシの頭の上をご覧下さい――。」
CVTR351は黒い帽子を脱ぎつつ、観客に一礼する。
その直後、CVTR351の頭の天辺に作成された庭園で、ジュース片手に寛いでいるトレーズが観客達を見るなり、一礼した。
そして、トレーズがいそいそと花壇に水やりをした瞬間、 観客達の笑い声が響き渡る。
(一体、何が起こってやがるんだ?)
CVTR351は手鏡で、自分の頭の状況を確認した。
そして、凍りつく。
頭の上には、トレーズの庭園と花壇のみならず、マイホームまで建造されていたからである。
(この野郎――!!?)
CVTR351は我慢出来ずに、トレーズへと手を伸ばす。
だが、CVTR351がトレーズに触れようとした瞬間、トレーズがCVTR351の左手にお茶をかける。
「お、あっちッ――!!?」
その直後、笑いが巻きおこった。
(ちくしょう……何で、俺がこんな事を――!?)
CVTR351は内心では滝の様な涙を垂れ流しながら、そんなやり取りトレーズと続ける。
そして、気が付けば地面に落ちたCVTR351の帽子の中は、大量の札束と小銭で満ちていた。
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