闇降りし雪の夜に。

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(雪か……。) 俺は何時もの如く、暗闇と排気ガスに塗れし薄汚れた空を見上げた。 夜の闇に注がれし白雪…。 今日もその地面は、赤い血で真っ赤に染まるのだから、白い雪が降るのは都合が良い。 俺はそう思った。 これから、このアスファルトの地面が、白い壁が血の赤に変わる。 そして、そんな状況を作り出すのは俺自身だ。 だが、そんな残酷な行為も今となっては、何の抵抗もない。 ただ、俺が所属する組織の標的となった者の末路と、その不遇を僅かにではあるが、哀れに思う。 ある者は泣き叫び、ある者は死にたくないと命乞いをする。 その中には罪の無い者もいるだろう。 悔いや未練のある者も沢山いるに違いない。 俺は、そんな悲痛の叫びを、幾度となく聞いた。 だが、標的になった時点で、その者達の運命は既に決まっている。 イレーザー達が、命を消しに来るからだ。 そして…俺もまた、そのイレーザーの一人。 哀れなる彼らに、俺が出来る事はただ一つ。 なるべく苦しまずに、彼らの命を刈り取ってやる事……ただ、それだけだ。 今日、消す相手は小さき者。 その詳細は分かりかねるが、受け渡されたデータからして恐らくは女、子供の類いであろう。 (さっさと済ませよう…。) 俺は雪の降り行く黒き空を見上げながら、ふと…そんな事を考えた。 女、子供を消すのは何時になっても慣れるものではない。 女、子供を殺すと、その声が暫く離れないのだ。 悲鳴や泣き叫ぶ声が、何時までも残り続ける。 だから、俺はこの手の仕事は気乗りがしなかった。 しかし……。
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