過酷なる道筋。

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(さて……そろそろ頃合いか?) 俺はヤツらが、ある一定範囲に近付いてくるの様子を窺いながら待っていた。 ヤツらは昔、何度となく倒したタイプの亜人である。 今更、恐れるような相手ではない。 昔、ヤツらを倒した時にスキャニングしたから、俺にはヤツらの性質が手に取るように分かっていた。 ヤツらは毒といった特性も持たず、道具を使うような知性もない。 つまり、バカ正直に俺達に対して、襲い掛かる事しか出来ないのだ。 だが、バカ正直に挑んだら、危険な相手である事だけは確かだろう。 「さてと……そろそろ追い駆けっこは、終わりにしようか?」 ヤツらが正面ラインに揃った瞬間を見計らい、俺が地面に向けて右手を翳した瞬間――。 地面が消失し、ヤツらを飲み込む。 ヤツらは、地下深くの石の岩盤に向けて落下し、獣じみた声を上げる。 普通ならば、それで命は尽きるであろう。 しかし、実験生物は並の生物よりもしぶとい。 その事を俺は良く理解していた。 (やはり、この程度では駄目か? 放置しておけばまた、復活するな。 ならば――。) 俺は、ヤツらに止めを刺すべく、だめ押しの再構成を成した。 その直後、ヤツらへと石の地面が覆い被さる。 僅かに何かが潰れる音が響いたが、それも一瞬の事に過ぎない。 (如何に強固な肉体を持ち、バカげた再生能力を持っていようが、ミンチになったら終わりだな。 しかし思ったより、手間取ったか?) 念の為、ヤツらを飲み込んだ地面に一瞬、視線を移してみるが当然の如く、そこに動きなどなかった。 死んでいると分かってはいるが、ついつい確認してしまう。 それは長年殺し屋をしてきたが故に、その身に染み付いた忌まわしき、習性と言うべきものであった――。 だが、その習性故に俺は、今日まで生き残れているのかもしれない…。 (何であれ、急がないとな――。) 俺は様々な思いを巡らしつつ、ミーアを抱き抱え実験施設内へと急いだ。
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