暗闇を照らす灯火

2/10
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/155ページ
「あれが次のターゲットか――。」 冷たい雪が降り行く中、一人の少女は立っていた。 人気の無い路地で、明らかに不自然にただ一人…。 黒髪の少女は立っていた。 空を見上げながら…。 まるで、誰かを待っているかの様に、彼女はそこにいた。 年齢は恐らく、14~16といった所だろうか? だが、彼女が何の為にここに居るのかは知らないが、そんな事を考える意味は無い。 誰を待っていようがいるまいが、彼女はここで俺によって命を奪われるのだから。 しかし……そうとは分かっていても、ある疑問が俺の脳裏を過る。 何故、この少女をここで殺す必要がある――? そんな疑問だ。 今までも確かに指令を受けて女、子供を殺した事はある。 だが、女……しかもこんな幼き少女が直接的に、殺しの対象になった事は今まで一度もなかった。 女、子供がターゲットになる時は大体が、別の標的と共に居るとか、主体標的の血縁者で見せしめや、次いでに始末する……。 今までは、そんな流れが主体だったのだから。 しかし事実、無力としか思えない少女がメイン・ターゲットとして俺の前にいる。 彼女に連れなど居ないのだから、彼女がメイン・ターゲットである事は、間違えようもない現実だろう。 (何故、こんな少女をメイン・ターゲットにしたんだ……リーブラは?) 余程の事がない限り、メイン・ターゲットになる事など有り得ない。 何かの間違い……或いはリーブラにとって、メイン・ターゲットにしなければならない程、危険視すべき存在……。 事の詳細は不明だが、俺の取るべき道は一つしかない。 少女を殺す道だけだ。 だが……。 「誰かを待っているのか?」 俺は思わず問い掛けた。 少女に気付かれない様に忍び寄り、 痛みを感じる間も無く殺す…。 それが少女にとって一番、楽な死に方に違いあるまい。 俺は、それを実現するに足る技量を保有している。 しかし、俺は何故か、ただ少女を殺して事を終わらせる気には、とてもなれなかった。
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!