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「あれが次のターゲットか――。」
冷たい雪が降り行く中、一人の少女は立っていた。
人気の無い路地で、明らかに不自然にただ一人…。
黒髪の少女は立っていた。
空を見上げながら…。
まるで、誰かを待っているかの様に、彼女はそこにいた。
年齢は恐らく、14~16といった所だろうか?
だが、彼女が何の為にここに居るのかは知らないが、そんな事を考える意味は無い。
誰を待っていようがいるまいが、彼女はここで俺によって命を奪われるのだから。
しかし……そうとは分かっていても、ある疑問が俺の脳裏を過る。
何故、この少女をここで殺す必要がある――?
そんな疑問だ。
今までも確かに指令を受けて女、子供を殺した事はある。
だが、女……しかもこんな幼き少女が直接的に、殺しの対象になった事は今まで一度もなかった。
女、子供がターゲットになる時は大体が、別の標的と共に居るとか、主体標的の血縁者で見せしめや、次いでに始末する……。
今までは、そんな流れが主体だったのだから。
しかし事実、無力としか思えない少女がメイン・ターゲットとして俺の前にいる。
彼女に連れなど居ないのだから、彼女がメイン・ターゲットである事は、間違えようもない現実だろう。
(何故、こんな少女をメイン・ターゲットにしたんだ……リーブラは?)
余程の事がない限り、メイン・ターゲットになる事など有り得ない。
何かの間違い……或いはリーブラにとって、メイン・ターゲットにしなければならない程、危険視すべき存在……。
事の詳細は不明だが、俺の取るべき道は一つしかない。
少女を殺す道だけだ。
だが……。
「誰かを待っているのか?」
俺は思わず問い掛けた。
少女に気付かれない様に忍び寄り、 痛みを感じる間も無く殺す…。
それが少女にとって一番、楽な死に方に違いあるまい。
俺は、それを実現するに足る技量を保有している。
しかし、俺は何故か、ただ少女を殺して事を終わらせる気には、とてもなれなかった。
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