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トラックに積まれた家具と独身寮を交互に見て、コウちゃんは「独身生活ともお別れだな」と笑う。
何年もここで過ごしたのだ。寂しいのかもしれない。
あたたかな風に乗って歌声が聞こえてくる。
近くの小学校から聞こえる、別れの歌の合唱。まだ卒業式本番じゃないから、何度も何度も歌い直しているのが微笑ましい。
卒業、かぁ。
私は、笑いながら、彼の右手に左手を重ねる。薬指の指輪にはまだ慣れないけれど、そのうち馴染んでいくのだろう。
「独身生活卒業おめでとう!」
斜め上から向けられるコウちゃんの笑顔が、とても優しい。
「ありがとう。次は夫婦生活入学?」
「ふふ。夫婦一年生、よろしくね」
何年先も、何十年先も、コウちゃんと手を取り合って笑い合いたい。
夫婦生活は卒業しないように、気をつけなくちゃ。ね。
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