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コウちゃんが住んでいたのは会社の独身寮だったから、「行ってみたい」と無理にお願いするわけにはいかなかった。
彼のことが好きだったから、嫌われたくなかった。
だから、付き合い始めて半年たったあの日、コウちゃんがはにかみながら「部屋に来る?」と聞いてくれたときの嬉しさを、どう表現すればいいのかわからない。
私がものすごい勢いで頷いたものだから、コウちゃんは「キツツキみたいだ」と言って笑った。
けれど、すぐに彼が半年も私を部屋へ招かなかった理由を知った。
「おいで、サクラ」とコウちゃんが呼んでも、その子は私をにらんでその場を動かなかった。
「ちゃんと躾けたつもりだったんだけど」と、申し訳なさそうにコウちゃんは笑ったのだけれど、私は本能的にすべてを悟っていた。
目の前にある「嫉妬」という感情。
それは、サクラちゃんが小さくても一人前の女性であることを示していた。
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