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「ドレスは決めたの?」
「まだですよ」
「先生のウェディングドレス、絶対に綺麗だよ」
「そうですかねぇ。そうだといいんですけど」
首筋にキスマークでもつけたら、里見先生は驚くだろうか。そんな度胸はないけれど。
「里見先生が羨ましい」
「それは、恋人だから? それとも、男だから?」
「両方ですっ!」
私が五年早く生まれていても、十年早く生まれていても、きっと里見先生には敵わない。先生が「子どもが欲しい」と思ってしまったら、私はそれを叶えてあげられないから。
「先生」
「はい」
「先生のことが好きでした。大好きでした。振ってくれてありがとうございました」
先生は耳元で「ふふっ」と軽やかに笑って。
「ありがとう、内藤さん。私を好きになってくれて」
私は、先生だから、先生を好きになったから、こんなにも幸せな気持ちで、受け入れることができたんだと思う。
私の失恋と、私の進路を。
五年後に、また、先生に会いに来ます。
生徒じゃなく、先生として。
そしたら、先生も、私のことを絶対に忘れないでしょう?
ね、 小夜 先生?
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