私の失恋

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 三階にある国語準備室をノックする。 「はい」  先生の声が聞こえたから、扉を押し開けて先生の姿を見つける。今日は机の前に座っていた。パソコンで作業をしている。昨日は棚の整理をしていた。一昨日は私たち用の資料を作っていた。その前は、うたた寝をしていた。 「今日は何をしているの?」 「明後日の小テストを作っているんです」  先生は一瞬私の姿を見て「あ、しまった」と困ったような顔をする。 「……内緒ですよ。内藤さん」 「わかってるよ。皆には言わないから」 「助かります」  私はこの国語準備室が好きだ。コーヒーの匂いが染み込んだ本や資料、ラベンダーの落ち着く香り、山積みになった本、その中で作業をする大好きな人。  先生、私はあなたがいるから、ここが好きなんです。  いえ、好きでした。
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