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「先生、もてるでしょ?」
「ええ。だから、いつも卒業式のあとが大変なんです」
悪びれもせず、事実を淡々と喋る先生が好き。好きだった。
「卒業して生徒じゃなくなったから付き合ってくれ、って?」
「そうです。だから、『大学を卒業して無事に社会人になったら、ようやく私と対等です。あと五年後にまだ私のことを覚えていたら、また口説きにきてください』と返事をして」
「で、口説きにきたのが、里見先生?」
先生はマグカップに口をつける。頬が赤くなったのは、きっとコーヒーのせいではない。
「……先生、私」
馬鹿げている。私なんて相手にされないことくらい、わかっている。わかっているのに。
想いを伝えないままで、私は、結婚式には、出られない。
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