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「先生にとっては、ただの生徒の一人でしかないけど……私にとっては、先生は、大好きな人だから」
先生、大好き。
大好き、だった。
「内藤さん」
穏やかな声に、私は肩を震わせる。私はもう、先生に「五年後に」とは絶対に言われない。だって、先生は、もうすぐで結婚してしまう。五年後、がないことくらい、わかっている。
「私はね、内藤さん」
ふわりと漂うコーヒーの匂い。ラベンダーの匂いより強く、脳に染み付いている。私は、コーヒーの匂いを嗅ぐたびに、先生を思い出すんだ。きっと。
「あなたの気持ちには気づいていましたよ。嬉しくて、くすぐったくて、いつもあなたの笑顔に救われていました」
私、先生を救ってた?
「酷い人間でしょう? 受け入れられない気持ちだと言いながら、その気持ちに救われているだなんて」
先生はマグカップを両手で抱えて私を見つめている。
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