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「教師も人間ですから、生徒にどんな形であれ、ずっと覚えていてもらいたいものなんですよ。恋をしていたという事実は、きっと、ずっと、記憶に残るでしょう?」
「私は、先生を覚えていますっ!」
先生を忘れたりなんかしない。絶対に。こんなに恋焦がれた人のことを、簡単に忘れられるわけがない。
「そう、内藤さんはきっと忘れないでしょう。私が内藤さんのことを忘れないように。でも、忘れてしまうものなんですよ、人間は」
先生は誰かに忘れられてしまったかのような、悲しげな表情で笑っていた。私は先生にそんな顔で笑ってもらいたくない。
先生には、心からの笑顔が、似合うから。
「……私があと五年早く生まれていたら、先生は私を選んでくれた?」
「そう、ですねぇ……里見先生と内藤さん、どちらを選ぶかはわかりませんが、二人が私を取り合っている姿は簡単に想像できるので、ちょっと面白いかもしれません」
「もう、酷いっ」
先生は、笑う。
私、先生の笑顔が大好き。
先生を笑顔にしてくれるなら、里見先生でも、いいよ。
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