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「先生」
「はい、内藤さん」
「里見先生には言わないから、一度だけ、ぎゅって、して」
先生は一瞬目を見開いて、うーんと唸ったあと、マグカップを机に置いた。
「内藤さんが、結婚式に出てくれるなら」
「出ます、出ますから!」
「じゃあ」
先生は、椅子を軋ませ立ち上がったあと、両手を広げて。
「どうぞ?」
私もタオルハンカチを置いて、ゆっくり、先生の体に抱きつく。
柔らかい体。
あたたかい。
コーヒーの匂いがふわりと鼻をくすぐる。
背中に手を回して、ぎゅうと抱きしめる。
先生は背中を撫でてくれる。
私とそう身長が変わらないのに、教壇に立つと、いつも大きく見えていた先生。
こんな華奢な体で、大きな声を出していたんだなぁと感心する。
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