26人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「おーす、セージ」
「お前がいっちゃん最後だぞ」
待ち合わせ場所にしていた中学校の校門前には既に二人の姿があった。
「おいっす。シゲも、タイチも、元気そうで何よりだわ」
僕らは小学校から高校までを共に過ごした親友、もとい戦友だ。何処に行くにしても僕らにノブを含めた四人一緒で、風邪や怪我なんかで誰かが欠けたら予定を先延ばしにするといった子供特有の不思議な、融通の利かない強い連帯感の下で、あの頃の僕らは過ごしていた。
「あれ、そういやシゲ、お前、前会ったとき禁煙し始めたって言ってなかったか」
前回僕が実家に帰った時にも僕らは集まって、しこたま騒いだが、その時シゲはタバコを吸っていなかったはずだ。奥さんがいい顔しないんでな、とか言って。
「ん、ああ、そのことか……」
「こいつ全然続かなかったんだよ、前にお前と飲んだ時から一週間ぐらいして、もう吸い始めてやがった」
ま、そういうわけだよ、とシゲは決まりが悪そうな笑みを浮かべるとタバコをポケット灰皿に入れ、蓋を閉めた。
「まぁ、な、今日はいつも通りというか、今まで通りの俺でいたいからさ……」
そうやって笑うシゲが何だか滑稽で、カッコつけんなよな、と二の腕のあたりをグーで軽く叩いた。
こうやって軽口を叩きあっていると、どこか学生時代に帰ってきたような、そんな気になってくる。
しかし、僕らがこれから行くのは葬式だ。そこでかつてこの輪の中にいた一人の男がこの世を去ったという現実を、今一度受け止めなくてはならないのだ。
「んじゃ、行くべ。セージ来たし。」
腕を天にぐっと伸ばし、タイチがゆっくりと歩き出す。
「それに何より、ノブが待ってる」
最初のコメントを投稿しよう!