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葬式の会場であるノブの家に行くまでにも、他愛のない話を繰り返した。僕を含め皆が皆平静を装ってはいたが、その端々にぎこちなさが残った。 それでも僕は、その中では一番平静だったと思う。ぼんやりとした言い方になるが、僕はノブがこの決断を下すということを何となく分かっていた。きっとあいつとはもう、あの頃みたいに何も考えずげらげら笑い合うことは出来ないのだろうと思ったとき、最後に行き着く先が僕にも何となく見えてしまったのだ。 そして今、それは現実のものとなった。ノブは神社の奥の森で一人首を吊り、残された僕らはノブの葬儀へ向かう道の途中にいる。それがこの、まだ春遠い街の中に佇む僕らの現実だった。 ノブの実家に着くと、もう何人もの人が記帳所に並んでおり、その中には幾人か見知った顔もあった。久しぶりだなぁ、覚えてるか、お前もきてたんだな……社会人になって身に付いたものの一つ、当たり障りのない紋切り型の言葉がぽんぽんと口をついて出てくる。背が伸びて、ものを知って、見えるようになった世界は思っていたよりも、狭い。 「この度は御愁傷様です」 受付を終え、今度は焼香の列に並ぶ。三人で一列となる並び方で右にシゲ、左にタイチ、真ん中が僕になった。 せめて、遺影は笑っていてくれよ、と心の中で願う。残された家族が選ぶんだから、笑ってる、いい写真を選ぶのは当然だろうとは思うが、笑っていてくれ。そう、願った。
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