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ーーーこのままでは殺される。
今、目の前に立っている人間は、俺を見ている。
その瞳に宿る感情は・・・殺意。
憎しみでもなく、怒りでもなく・・・
ただ、無表情に目を見開き・・・うなり声をあげながら、俺を見ている。
猫が獲物にジリジリと距離をつめて、低くうなり声をあげながら、
今まさに飛びかかる寸前・・・そんな感じ。
俺は、彼女の視線に、身動きできずにいる。
寺に併設された墓地の中で。
先日降った雪が溶けきれずにまばらに残って、吐く息が
白い・・・。
墓石の並ぶ灰色と白の世界の中で、俺とその人と二人きり、対峙している。
俺が動けば、すかさず彼女は飛びかかってくるだろう。
かといって、このまま動けずにいても、やはり彼女は
襲いかかってくる。
彼女は年老いている。
正確な年齢は知らない。
でも、多分80歳近いのではなかろうか。
17歳の男の俺の方が力では確実に勝てる。
俺が本気で殴りかかれば、ただ事ではすまないだろう。
だから、躊躇する。
反撃する事は、選択したくない。
怪我をさせたくない。
でも、彼女の目は、彼女の瞳に宿る殺意には、
そんな甘い事を言っていられない恐怖を感じる。
死にたくない。
それだけは確かな感情。
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