夜霧ノ杜

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「アンタはモノモノの類(たぐい)か?」 「なればどうする?」 「そうか、俺と問答をしたいというか。よし、ならば相手をしよう」  俺はいよいよ、しばらくの語り語りも止むなし、と覚悟を決めその場に座り込んだ。 「されば、さあさあ~はじめよう。まずは目をば、さ、閉じんしゃい」  闇の者が云う。こうなったら仕方がない。俺は言われるままに目を閉じた。 「お前さん、家に帰る途中か?」 「おう。俺は家に帰る途中だ」 「お前さんの家は村にあるのか?」 「おう。俺の家は村にある」 「お前さんは町から村の家に帰る途中か?」 「そうだ、俺は町での仕事が終わり、村の家へ帰るところだ」 「お前さん、町での仕事はなんだった?」 「祠(ほこら)わたりの修繕だ」 「お前さん、祠の脇で今日、何やら見たであろう?」 「おう。見た……」  この時、俺は今日一日の出来事が一気に、鮮明に頭の中に流れ込んでくるのを感じた。  帰り道の途上、なぜ知らぬ風でいられたのか、あんなことがあったというのにだ……  それは……今日の……まだ日が高い、昼時分のことだった…………
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