1人が本棚に入れています
本棚に追加
電話が終わった後、わたしは『あいつも、俺のことを覚えていたのか……』と考え、少しうれしい気持ちになったが、すぐに『あいつ、1か月も意識不明だなんて、大丈夫なのか?』ということも考え、不安な気持ちが大きくなった。
翌日、わたしは電車に乗り降りし、徳川が入院している病院に向かった。
その病院はかなり大きい病院で、わたしは徳川が入院しているという765号室へ行った。
部屋の前でノックをして入ると、その部屋には女性と、わたしの息子と同じくらいの年齢と思われる少年がいた。
また、その部屋のベッドでは、顔に酸素マスク、腕に点滴がされている男性が寝ていた。
おそらく、これが徳川なのだろう。
徳川が寝ているベッドの横では心電図が「ピッ、ピッ、ピッ」と小さく鳴っており、わたしは動きが固まってしまった。
「よく来て下さいました。わたしが徳川の妻の和美と申します。この子はわたしと徳川の息子の広大と申します。そして、お分かりと思いますが、ベッドで横になっているのが徳川です」
徳川の奥さんはわたしにそう言うと、ベッドの徳川のそばに行き、徳川の耳元で「あなた、伊達さんがお見舞いに来てくれたわよ」と言った。
しかし、徳川は目をつぶったまま、何の反応も見せない。
想像はしていたが、徳川のこういった姿を実際に見ると、『何かの間違いであってくれ』と思わざるを得ない。
「徳川は、どういう状況でこうなってしまったんでしょうか?」
最初のコメントを投稿しよう!