6人が本棚に入れています
本棚に追加
この時期になると必ず思い出す事がある。
私が
まだまだ幼かった頃…
春休みに入り、友達と遊び過ぎて、帰らなければいけない時間をとうに過ぎてしまった日。
私は母の怒る怖い顔を思い浮かべながら、今にも泣きそうな顔で家までの道を一生懸命走っていた。
後、少しで家に着く。
いつもより少し暗い空。
そんな薄暗い中
そろそろ満開を迎えようとしている大きな桜の木の下に佇んでいる人影に子供心に恐怖を感じた。
その姿に目を逸らすことが出来なくて
走る事も忘れ
ゆっくりと人影に近づいた。
そこには背の高い、細身の男の人がまだ咲ききっていない桜を見上げていた。
その人は
桜を見上げていた瞳を伏せ
振り返った私と視線がぶつかると悲しそうに微笑んで背中を向け私とは反対方向に歩き出した。
あの頃、子供だった私には男の人がとても大人に見えた。
けれど、今の私が見たらきっと、同じくらいに見えただろう
いま思えば、私があの男の人を見た頃だった…
隣の恵美子お姉ちゃんが帰ってこないと、大騒ぎになったのは
最初のコメントを投稿しよう！