記憶

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年は離れていたけれど、恵美子お姉ちゃんは時間があると私と遊んでくれた。 公園へ連れて行ってくれて、時間になっても帰りたがらない私に 「じゃあ、後1回滑り台滑ったら帰ろうね。」 「ブランコ10回で今日はおしまい。」 と、私に、視線を合わすようにしゃがんで優しい顔で言ってくれた。 お母さんの言う事は聞かなかったけど、恵美子お姉ちゃんの言う事は素直に聞けた。 「もうっ、本当に恵美ちゃんの言う事しか聞かないんだから!お母さんの言う事も聞きなさい!」 なんて、お母さんにはいつも怒られていた。 公園からの帰り道は、真っ黒になった私の手を嫌がる事もなく繋いでくれて並んで帰った。 夕焼けの歩道に伸びる2人繋いだ手の影が、歩く度に揺れるのが大好きで、スキップしながら大きく手を振った。 雨の日や、夏の茹だるような日は、恵美子お姉ちゃんの部屋で、折り紙や絵を書いた。 恵美子お姉ちゃんの手の中で四角い折り紙が小さく折り畳まれ、形になっていく。 動く鶴や飛ぶ蛙 運動会や、発表会の後は 頑張ったご褒美だよ。 と金や銀色の折り紙で作ったメダルを私の首にかけてくれた。 メダルを首にかけてもらう瞬間がとても誇らしくて… 眠るまで外さなかった。 恵美子お姉ちゃんは絵も上手だった。 おねだりした動物や、女の子をスラスラと簡単に書いてくれ、その絵を塗り絵にして楽しんだ。 私が折るゆがんで下手くそな折り紙の鶴や膨らまない風船を 言わなければ何を書いたのか分からない様な拙すぎる絵を得意気に見せる私に うん。うん。凄い、上手に出来たね。 と目を細め微笑み頭を撫でてくれた。 そんな優しくて、綺麗で、いつもニコニコ笑っている恵美子お姉ちゃんが私は大好きだった。
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