記憶

5/8
前へ
/8ページ
次へ
毎日、毎日、家の周りを警官が歩き回る。 その異様な光景を横目で見ながら、春休みを過ごした。 近所の小学生は外出を禁じられ 中学生は1人での行動を禁じられた。 本当なら、昼間から子供たちの賑やかな声が家の外や、公園から聞こえる春休み。 それが、その年は閑散とした春休みだった。 数日後には、あんなに居た警官の数が日に日に減り、恵美子お姉ちゃんの話も出なくなる。 皆、恵美子お姉ちゃんを忘れてしまったように… 誰も恵美子お姉ちゃんの話しをしなくなった… その内に恵美子お姉ちゃんには恋人がいて、恋人と駆け落ちしたのだろうと云うことになったようだった。 そして、うちの周りも恵美子お姉ちゃんがいた頃のように静かになった。 駆け落ちと結論がでた日の夕飯時 「恵美ちゃんもねぇ、ご両親が交際に反対してたからって駆け落ちなんてしなくてもねぇ。その後のご両親の気持ちとか考えなかったのかしら。いい子だと思ってたのに。」 お母さんがそんな事を話し始めた。 「あなたはそんな事しちゃダメよ。」 私が答えずにいると、お父さんが、声を荒らげてお母さんを怒った。 「子供の前で話す事じゃないだろ!よそ様の事をそんな風に子供に言ってどうする!いい加減にしろ!」 あまり怒る事がないお父さんの怒鳴り声に、私もお母さんもビックリして、固まった。 小さな声でお母さんは ごめんなさいと謝ると又食事を始めた。 私はそれ以上食べる事も席を立つことも出来ず、その場で座っていた。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加