6人が本棚に入れています
本棚に追加
私たちに日常が戻った。
残り少なくなった春休みを外で遊び、進級準備をして過ごした。
私があの男の人を見たのはそんな時だった。
男の人は桜の季節になると必ず来る
桜が散り、葉桜になっても同じ樹の下にいた
その時は特に何も思わず
今年もいるな。
この桜が好きなのかな?
と思うだけだった。
けれど、毎年、毎年、同じ場所に立つ男の人の姿を見つける度
その表情を見る度
奇妙な
不思議な
感情を抱くようになった。
男の人が見上げる桜の木は
夜になると昼間とは雰囲気を変え
艶やかで─
妖しく─
心を震わせ─
目を離す事が出来なくなる─
それなのに
なぜか恐ろしい─
と、人々に言わせた。
その姿は今も変わらずに見る人を惹きつけて止まない。
最初のコメントを投稿しよう!