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「ほんと、なのかな…」
小さい頃から祐空と一緒で、気付いた時には私の中で祐空が一番になっていた。
高校受験の時、私が失敗した時も祐空は何も言わず私を支えてくれた。
同じ大学に行こうっていう目標に向かって一生懸命走り抜けて、やっと祐空に追いついたのに…
こうやって祐空はまた、私を置いて行こうとしている。
祐空は空から舞い落ちる桜のように追いかけても後一歩のところで届かない。
すり抜けて…私を1人にする。
下にある視線を上に向けると、先ほどと変わらず桜の幻想的な姿が目に映る。
フワリと春の匂いを包んだ夜風が吹くと、桜の花が散り、私の指の間をすり抜けて行った。
「祐空…行かないで…」
「紗苗!」
静かな大学構内に大きく響いた私の声は、ずっと…聞きたかった声だった。
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