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「まだ返事はやめてもらえるかな。紗苗ちゃんにちゃんと考えてもらいたいから」
口を塞がれたまま優しい声で言われ、とりあえず頷くしかなかった。
頷いたことに満足したのか、神谷さんは私の唇を塞いでない方の手でポンポンと頭を撫でて何事もなかったかのように新歓の場に戻って行った。
結局、早退を断ることもできず、最後まで祐空の緩みっぱなしの顔を見る羽目となってしまった。
いっそ、わたしも神谷さんに逃げてしまおう…
そう考えが何度かよぎったが、やっと祐空に近づいたのに自分から離れていくのは心が痛む。
「じゃ、今日はこの辺で」
神谷さんの声とほぼ同時に予め用意しておいた会費の封筒を渡し、私は居酒屋から逃げるように去った。
「紗苗!」
誰の声かわからないけどすこし遠くから聞こえる声を遮ってそのまま走ってその場を後にした。
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