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「た、祐空…」
ハァハァ、と息を切らしながら祐空は私に近づき、そのまま胸の中におさめられた。
「バカ、なんで先に帰るんだよ…!」
ドクドク、早い心臓の音がちょうど私の耳元で鳴り響く。
大学から近いとはいえ、かなりある距離を祐空はきっと全力で走ってきたのだろう。
顔を上げればすぐに祐空の顔が見えるだろうが、見たら泣いてしまいそうで顔を祐空の胸に深く沈めた。
「…紗苗?」
こんな甘え方を私は初めてしたからか、祐空は心配そうな声で私の頭を優しく撫でた。
…好き。
そう思っているのに…
「…どうして来たのよ」
私の口からは棘のある、冷たい言葉しか出てこない。
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