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「そんな紗苗でも、俺はいいって思ってた。でも…さすがにもう我慢できない。紗苗は俺の彼女だってみんなに証明しないと、紗苗がいつさらわれるか…わかんねぇだろ…」
祐空は右手を私のあごに乗せ、空いた左手で私の頬をさすった。
ゾク、と身体中に電流が走ったように身体の動きが止まった。
「こんなこと、ほかの男にされるのが嫌なんだよ」
「祐空…」
「紗苗…もうお願いだから…俺から離れるなよ」
なんと言っていいかわからず、私が首を縦に振ると、祐空は私を引き寄せギュッと痛みを感じるほど抱きしめてくれた。
「もう絶対離さないから」
私の耳元でそう囁くと、祐空は私の顔を上げ、そのままゆっくりと唇を近づけた。
甘い吐息と春風が私を包み、溶けそうになる。
人気のない大学に風にのった桜がひらひらと舞い落ちていた…
【完】
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