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「……え?」
突然のことに素っ頓狂な声を出してしまった。
『俺にしない』
その言葉がとっさには理解できなかった。
「紗苗ちゃんの苦しむ姿を見ると…俺も苦しいんだ。自分から言い出したのに…でも、この際だから言うね」
ふぅ、と深呼吸をする神谷さんのなんだか悲しそうな目に何故だか目が離せなかった。
「紗苗ちゃん、俺なら君をそんな顔をさせない…好きなんだ」
「う、嘘ですよ…ね…」
首を横に振った神谷さんの目はまっすぐ私を捉え、本気だと訴えている。
「か、神谷さん…何、言って…」
「本気だよ、俺」
少し薄暗いトイレへの道は食事するところから少し離れており、ガヤガヤとした声が遠くに聞こえ、神谷さんの声がダイレクトに届く。
間接照明に照らされた神谷さんは私の少し伸びた髪に手を伸ばした。
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