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さほど広くない部屋に1人テレビの前で座っていた。まるでバラエティーでも観ているかのような笑みを浮かべた顔は決してバラエティーを見ていて笑っているわけではない。
観ているのは野球中継だ。だがそれは日本代表や日本シリーズの試合ではなく、以前俺がそこに立っていた球場の試合で今日そこに俺が育てた選手が立つ予定の試合だ。
俺は今2軍打撃コーチとして選手たちを育てている。そして今日出場する選手は鳴かず飛ばずのベテラン選手で選手時代からよく同じ釜の飯を食べた仲だ。だからこそ、コーチとして面倒も見た選手がブレイクする瞬間に年甲斐もなく胸をワクワクさせているのだ。
そして、テレビに今日のスタメンが発表された。教え子は「7番、ライト」と悪くない打順だった。きっと、今日の試合で1安打でも出れば明日も一軍に居れるはずだ。だから、一打席でもいいから多くの打順が巡って来てほしかった。そう、今日の相手はそう簡単に打たせてくれるやつではないのだ。
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