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直後、背後から突風が吹き、二人共が髪や目元に手をやり、目を閉じる。政の長い黒髪は勢いよく巻き上げられ、桜の花びらと共にふわふわと流れるかのように、舞うように空を泳ぐ。
その光景を秋谷は細めていた目をほんの少し開きながら、まるでこの世のものではない美しいものを見ているような錯覚になり、政から目が離せなくなる。
「凄い風でしたね、秋谷さん。……秋谷さん?」
やがて突風も静まり、乱れた髪を手で整えながら秋谷を見ると、秋谷は政を見つめたまま固まったように動かない。そんな秋谷を不思議に思い、再度名前を呼べば、政の髪に伸びてくる手。
力加減を間違えないようにそっと優しく政の髪に触れる秋谷の手。髪の隙間をするりと流れる秋谷の指をくすぐったそうに目を閉じる政を、愛おしそうに見つめる秋谷。
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