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「そろそろ帰りましょうか。送りますよ」
「……は、はい。ありがとうございます」
秋谷の声にようやく顔を上げて秋谷と目を合わせれば、先程の辛そうな色はもう微塵も感じられないほど、いつも通りに優しく微笑む秋谷がそこにいた。
どうにか普段通り何気ない会話をしながら恥ずかしさをごまかしていた政も、次第に落ち着きを取り戻し、家が近くなる頃には楽しそうに笑顔を見せていた。
「秋谷さん、今日はありがとうございました。とても楽しかったです」
「いいえ。誘っていただけて嬉しかったです」
「あの、秋谷さん」
「何ですか?」
政の家に着き、今日の礼をする政に秋谷も笑って返すと、何かを言いたそうに口籠もる政。
「あの、また一緒に桜を見てくれますか?」
「……ええ。また、一緒に見れたらいいですね」
意を決して告げた言葉にも笑って、嬉しそうに肯定してくれる秋谷に、政は自然と笑みが零れる。
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