桜吹雪に想いをのせて

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 夕餉の買い出しで町が賑わい始める八ツ半になる頃。秋谷は政を家まで送った足で、ある場所に足を踏み入れていた。裏口から入り、草履を脱ぎ、ある一室に一声かけてから入る。 「失礼します。副長、お耳に入れたいことが」 「山崎か。どうした?」  文机に向かって筆で何かをしたためていた黒髪の男性に向かってそう声をかけたのは秋谷、基、新選組の山崎烝。 「例の浪士の潜伏先を突き止めました」 「お、そうか。今回は手こずったな。それで、場所は?」 「町の外れの、寂れた寺に」 「外れ、か。よく見つけたな。よし、今晩にでも出るか。ご苦労だったな。少し休んでおけ」 「はい。失礼しました」
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