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『何だか今、秋谷さんが秋谷さんでないような気がして』
『変ですよね。秋谷さんとはもう何度もお会いしているのに、まるで今初めて本当の秋谷さんを見たような気がして……』
だからあのとき、偽りだらけの自分の中に本当の自分を、「山崎烝」を見つけてもらえたような気がして、山崎は驚き以上に嬉しさの方が勝っていた。
『……貴方は、面白いことを言いますね』
(――無意識でも無自覚でもいい。「俺」を見つけてくれて、ありがとう)
そう言葉にして伝えたいのを押し殺して、ごまかすかのようにそう言った山崎。
風に巻き上げられた髪を整えようとする姿に魅入ってしまい、思わず手を伸ばしてしまった自分に困惑しつつ、山崎は壊してしまわないように、汚してしまわないようにと恐る恐るその髪に触れる。
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