桜吹雪に想いをのせて

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「それでは、この薬を飲ませてください」 「はい。いつもありがとうございます、秋谷(あきや)さん」 「いいえ。それではお大事になさってください」  からからと戸を閉めて帰っていく青年の姿を見送ると、政(まさ)は今し方買った薬を胸元で支えるようにしっかりと持ち、家の中に戻る。  三つ下の弟は身体が弱く、よく熱を出して寝込んでしまうので、薬の行商人からたびたび薬を買っては弟に飲ませているのだ。  それゆえに今ではすっかり先程の行商人、秋谷とは顔馴染みで、玄関先や町で見かけた際にはちょっと立ち話なんかもしたりするほど。  そんな秋谷に、政は密かに恋心を抱いていた。
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