2人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
「姉様」
「あら、起きちゃった? 今お粥作るからね。それ食べたらお薬飲みましょう」
弟の光生(みつお)が布団から上半身を起こしていることに気が付いた政は、枕元に薬の入った包みを置いてから勝手場に向かう。
葱と梅干しと玉子を使って作ったお粥は梅干しの酸味で少ない食欲を刺激し、弱った身体に元気を与える。
取り分け具合の悪いときには家族が作ってくれた手料理が身体と心に染み渡るというもの。
全てを食べ切れた光生が薬を飲み、また布団に横たわるとしばらくして規則正しい寝息が聞こえてきて、政は一人笑む。
数日後、政が夕餉の買い出しに出ていると、大きな薬箱を背負った見慣れた背中が見えて、思わず声をかける。
「秋谷さん?」
「ああ、お政さん。こんにちは。あれから弟さんの具合はどうですか?」
「ええ、秋谷さんからいただいたお薬が効いたようで、もうだいぶ良くなりました」
「それはよかったです」
最初のコメントを投稿しよう!