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眉が見えにくいほど目深に巻かれた臙脂色の織物を左手で高さを直しながら笑う秋谷に、政も自然と笑顔になる。
「そうだ、秋谷さん。よろしければそこのお店でお茶でもどうですか?」
「え? ええ、もちろん」
せっかく町で出会ったのだ。いつもは立ち話しかしないが、たまにはお茶でも飲みながら二人でお話出来たら。そう思って政は秋谷を誘う。
最初は驚いたのか少しばかり目を見張っていた秋谷だが、やがて彼も笑顔で頷き、近くの甘味処へ入る。
「秋谷さんはどのくらい薬の行商をやっているんですか?」
「そうですね、もうそろそろ三月(みつき)になりますかね。まだまだ駆け出しですよ」
「あら、そうなんですか。そのわりには秋谷さんのお薬はよく効くからいつも助かってます」
「そう言っていただけると嬉しいですね」
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