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ふと、秋谷はどんな顔でこの桜を見ているのだろうと気になった政が左隣りに立つ秋谷をそっと見やると、いつも会うときよりもずっと穏やかな笑みを浮かべていて、政はまるで違う人を見ているような気分になった。
今隣にいるのは紛れもない秋谷本人だというのに。
「……ん? どうかしましたか?」
「あ、い、いえっ。何だか今、秋谷さんが秋谷さんでないような気がして」
「え?」
「変ですよね。秋谷さんとはもう何度もお会いしているのに、まるで今初めて本当の秋谷さんを見たような気がして……」
「……貴方は、面白いことを言いますね」
「すみません、忘れてください」
視線を感じて秋谷が政を見ると、その口から発せられた言葉に驚愕したのか、目を見張る。そしてすぐにいつもの表情に戻り、穏やかに笑う。
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