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コートはさよならして、少し肌寒いものの、カーディガンだけで家を出る。
道にたった1本だけある桜の木の枝には、気の早い蕾が多かったらしく、もう満開だった。
毎年花見、というわけではないが、登下校中はいつも見ていた。
いや、視界に入るだけだった。
こんなわざわざ見にくる、なんてことはなかったように思う。
「今年も綺麗だなあ」
風が強く吹いて花びらを降らせる。
―傘が必要だったかな
雪のように、はらはらと頭上から降ってくる。
鼻に当たって。
肩に当たって。
差し出した手のひらに乗って。
また風が吹いて舞い上がって、上から降ってくる。
ちょっぴりもちっとした、軽いピンクの雪。
降り積もったかと思えば、風に吹かれて、また降る雪。
ぐっと手を出して、振ってくる雪を捕まえようとする。
が、なかなかつかめない。
―なんだったっけな、桜の花びらを空中でキャッチしたら…
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