8.酒のつまみ、再び

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「崇さん」  背中を向けた崇さんに、僕は声をかけた。 「なんだい」  そう応えながらも、僕の方を向かずに、食器を洗い始める。 「あの……時計、どこに……」 「……片づけた」 「えっ」  崇さんは、そのまま食器を洗い続ける。 「でも、あれは」 「……今の俺にはね、テルくんの悲しい顔を見ることのほうが辛いんだ」  洗い終えたのか、水道をキュッと締めて、僕のほうを振り向いた。  その顔は、とっても優しく微笑んでいた。逆にそれが、僕を切なくさせる。 「……崇さん」 「あ、そうだ」  何を思いついたのか、崇さんがキッチンを出ていったと思ったら、すぐに戻ってきた。その手には、何かを握りしめている。
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