5.ネクタイ

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 次の日、僕は大学の校内を平川先輩に見つからないように、隠れながら移動していた。  はたから見たら、かなり怪しいやつに思われたかもしれない。  心の片隅では山本さんの心配をしてはいる。してはいるけど、平川先輩のことを考えると、安易に何も言えない。  だから、とりあえず、遭遇しなければいい、そう思っていた。  学部は同じとはいえ、学年が違えばあまり講義が被ることない。  この前会ったのが、たまたまなだけで、普段は姿をみかけもしない。  だけど、用心には用心を重ね……と思っている矢先。 「あ、濱田なら、あそこにいますよ」  教室の入り口で、僕の名前が言われた気がして、ギクリとする。  まさか、ここまで平川先輩が探しに来たとでもいうのだろうか。
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