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「え、あ、はい……」
「よかったぁ……」
目に見えてホッとしている彼女。
「あの、僕に何か?」
「あの、平川先輩から濱田さんに伝えるように言われて……」
彼女の口から先輩の名前が出てくるとは思わずに、思わずピキンっと身体が固まってしまった。
たぶん、顔もこわばっていたのだろう。彼女は、少しばかり心配そうな顔で僕を見つめる。
「えと、あのですね?」
彼女が言葉を続けようとしたとき、教室のドアが開いて教授が入ってきた。
それに気づいた彼女は、慌ててカバンを抱えなおして、「あ、あとでお話がありますっ」とだけ言うと、頭をペコリと下げて、僕から離れていった。
女の子にあの話をさせようというのか。女の子が相手だったら僕が話を聞くとでも思ったのだろうか。
そう考えると、彼女も可哀そうに、と同情していまう。そして、ついつい思ってしまうのだ。話くらいは聞いてあげようか、などと。
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