8.酒のつまみ、再び

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 なかなか振動が止まらないので、携帯を取り出すと、電話がかかってきている。  それも崇さんから。  慌てて、通話を押した。 「崇さん?」 『ああ、もう着いた頃かと思って電話したんだけど』 「え、まだ〇〇駅ですけど」 『今、どこ?』 「え?」 『迎えに来たんだけど』  その言葉に、僕は慌てて周りをキョロキョロと見回した。 「16番線のホームから階段上がったところです」 『16番線……わかった。近くに何がある?』  僕は階段を上り切った目の前にある店を伝えた。 「え、えーっと、カウンターのある飲み屋さんみたいなのと……洋食屋さんと、お寿司屋さん……かな?」 『とりあえず、見つけやすそうなのは、どこ?』 「あ、じゃ、じゃあ、お寿司屋さんのところにいます」  僕は足早にお寿司屋さんに向かうと、角に立ちながら携帯を握りしめ、周囲を見渡す。  この時間になっても人の流れは、減っている気がしない。
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