8.酒のつまみ、再び

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 この中から崇さんの姿を見つけることが出来るのか、と思ったら、意外にも簡単に見つけることが出来た。  僕のプレゼントした手袋をはめた手をあげて、人波をかきわけてくる。  その姿を見ただけで、僕はひとりでに微笑んでいた。 「おかえり」 「た、ただいま、です」 「荷物、それだけ?」  手にしていたバックとお土産の入っている紙袋。  崇さんは、それを持とうと手を差し出してくる。 「あ、はい、そうですけど、これくらい、僕でも持てますから」  持ち手をギュッと握りなおして、僕は微笑む。  少しばかり残念そうな顔をした崇さんが、なんだか可愛いと思えた。 「実は僕、夕飯食べ損ねて」 「食べてこなかったの?」 「あー、はい」 「じゃあ、何か食うか?」  そう言いながらお寿司屋さんを覗き込む崇さんに、僕は慌てて崇さんのコートの袖を掴んだ。
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