8.酒のつまみ、再び

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 実家から戻ってきて崇さんの短い正月休みが終わるまで、僕たちは崇さんの家で過ごした。  特別、何をするでもなく、ただまったりと一緒の時間を過ごす。  そんな時間が幸せで、いつまでも崇さんの隣に寄り添っていたい、そう思っていた。  心が温まるような、そんな幸せな休みが明けると、崇さんはまたいつものように忙しい日常が戻っていく。  僕のほうも少し遅れて休みが終わり、崇さんの家から自分のアパートに戻った。  久しぶりに戻った自分の部屋の空気は、人がいないというだけでかなり冷ややかに僕を迎えてくれた気がする。  戻って一週間もすると試験期間が始まるせいで、試験勉強をし始めた僕には、崇さんと会う時間がまったくなかった。  崇さん自身も忙しかったのもあるけれど、その間、何度か電話やメールのやりとりしかできなくて、僕は崇さん不足で試験が終わるころには、干からびてしまっていた。
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