8.酒のつまみ、再び

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「テルくん」  優しく僕の名前を呼ぶ声に、思わず笑顔が零れる。  振り向くと崇さんが、少し息をきらして立っていた。 「お疲れ様です」 「ああ、テルくんも。何買ったの?」  僕が下げていたレジ袋に目を向ける崇さん。  僕は、フフフっと笑いながら、崇さんにレジ袋の中身を見せた。 「おお、酒のつまみか。お!俺の好きなかわはぎも入ってる」 「あ、やっぱり、これ、お好きでしたか」 「あはは、ついつい、これ、買っていまうんだよ」  僕たちは他愛無い話をしながら、店を離れ、エレベーターに向かう。  この時間帯は、結構、お客さんがいて、僕たちはエレベーターの奥のほうに追いやられてしまった。  不意にレジ袋を持っていないほうの手に、誰かの手が触れ、ギュッと握りしめられた。
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