8.酒のつまみ、再び

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 崇さんが連れてきてくれたのは、駅のそばにあった雑居ビルの地下。  ちょっと古い感じのスナックが並ぶ中、一番奥にあった紺色の暖簾の下がっている古い小料理屋があった。  金曜日の夜なだけに、カウンターはおじさんたちが占領している。  たぶん、女将さん目当てなのだろう。  ぽっちゃりとして優しそうな雰囲気の和服姿の女将さんに話しかけている姿が目につく。  店の中は混んではいたものの、タイミングよく入口近くのテーブル席に座ることが出来た。 「崇さん、色ろんなお店、知ってるんですね」  壁にはいくつもの手書きのメニューが貼られてる。  キョロキョロと店の中を見回す僕。そんな僕を見ながら、崇さんはクスクス笑う。  「色んなってほどじゃないよ。今日はテルくんの試験が終わった慰労会みたいなもんだから。実はここ、魚料理が結構旨いんだよ」  嬉しそうに笑いながら崇さんはメニューを僕に見せると、女将さんに向かって手をあげた。
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